※最終更新日:2024/4/25
初めまして、ロールスと申します。
今回は、2014年から延べ2000頭以上の調教映像を見てきた私が、競馬新聞等に掲載されている調教の見方が分からない方へ、調教で見るべきポイントを解説していきます。
筆者の自己紹介
この記事で分かること
- 調教を見る時の注意点を解説
確かに調教映像は宝の山ですが、正しい見方が分からねば意味がありません。
調教を見る時の注意点を意識することで、予想時間の節約に繋がります。
- 調教映像で見るべきポイントを解説
調教タイムではなく、調教映像で見るべき注目点を挙げていきます。
この記事で挙げた注目点に当てはまる馬を調教映像で探せば、人気馬や穴馬の取捨の幅が増え、予想の精度が上がるでしょう。
調教を見る時に注意しておくべき点
1.違う競走馬同士を比較しない(超重要!!)
例えば、出走メンバーの中で同じ坂路で調教を行ったケースがある時に、「競走馬Aの4ハロンのタイムは51秒台だが、競走馬Bの4ハロンのタイムは53秒台だった」というケースがあるとします。
この時によくやりがちな誤った判断とは、「Aの方がタイムが速いので、BよりAが良い調教を行った」と結論付けることです。
正しい調教の見方は、「その馬の過去の調教と今の調教を比較し、どう変化したかを見つける」ことなので、違う馬同士の調教と見比べることは全く意味が無いのです。
2.調教タイムは意識しない
(※2023/5/10 加筆をし、文章の一部を修正した。)
(※2023/5/28 文章の一部を修正した。)
調教で使われるコースの状態は、馬が走れば走るほど次第に悪くなっていきます。
何故なら、馬が走ることでコースの土がえぐれ、走るのに馬力が要る状態になるからです。
また、坂路コースやウッドコースでは、雨や雪が降って馬場が渋った時には早いタイムが出にくくなる傾向があります。
さらに、コースが悪くなったらハロー掛け(※調教コースの土を均すこと)を行うことでコースの状態が回復し、今度は早いタイムが出るようになります。
このように、調教で使われるコースのコンディションは常に同じ状態ではないため、タイムだけの比較というのはあまりオススメしません。
それよりも、その馬の調教が好走時の調教での動きと似てるかを重視してください。
そして、その馬が好走時と似たような動きをし、尚且つ調教タイムがその馬の自己ベスト更新または自己ベストに近いものだと、好調教と判断出来ます。
調教タイムはあくまで参考です。
調教タイムは、調教時の馬の動きとセットで見てこそ、意味があると考えます。
※ただし調教映像が無い時には調教タイムのみ見てもOKです。
ここで言いたいのは、「調教のタイムだけにとらわれないように注意しましょう」ということです。
3.調教コメントは読まない
競馬新聞の調教欄を見ると、トラックマン(※競馬新聞の記者のこと)の所見が述べられています。
ですが、これらの所見は必ずしも正解ではありません。
何故なら、トラックマンでさえ調教を見誤り、期待薄の馬が好走することがよくあるからです。
また、調教コメントばかりに頼って自分で調教を見なければ、いつまで経っても調教でのあなた自身の判断力が育たないでしょう。
なので、調教コメントは見ずに自分の目で競走馬の調子が判断出来るように、ドシドシ調教を見て訓練しましょう。
4.併せ馬で相手に先着したかはあまり重要でない
併せ馬(※闘争心の向上やペース配分を教えるために、2,3頭で走る実戦的な調教のこと)で相手に先着出来るかは、併せ馬のシチュエーション次第で変わります。
そのため、併せ馬の相手に先着したかどうかは、常に同じ相手と走る等、同じ条件下で行われた併せ馬でない限りは判断材料としてあまり強くありません。
併せ馬の調教を見る場合は、単に併せ馬で先着したかどうかではなく、「併せた相手のアクションに対して、その馬がどんな反応を取ったか」を見るようにしましょう。
具体的な反応としては、「併せた相手に抜かれそうになったら、馬なりで加速して相手を引き離した」、「馬体を併せた相手へ顔を向け続けながら脚を溜め、騎手からゴーサインが出た途端に急加速して相手を置き去りにした」等があります。
そして、併せ馬で見せた反応が好走時の調教で見せた反応と同じだったならば、好調と読み取れます。
何度も言いますが、その馬の調教が好走時の調教と同じ動きをしてるかで競走馬の調子を判断するようにしましょう。
5.好走時の調教メニューかどうかを比較する
例えば、2020年のオールカマーにジェネラーレウーノという馬が出走した時のことです。
ジェネラーレウーノは屈腱炎を発症後、 長期休養明け緒戦の本追い切りを全て美浦坂路で行っていました。
その坂路でのタイムは水準級のもので、中々の好タイムでした。
しかし、ジェネラーレウーノは屈腱炎にかかる前は、元々南Wコースがメインの追い切りを行っていた馬でした。
それにもかかわらず、休養明けと異なる調教メニューを課してきたのは「調教メニューを変えなければならない何かしらの理由があったから」と考えられます。
※実際、ジェネラーレウーノの調教メニュー変更は、脚部不安でコース追いが出来なかったからというものでした。
矢野師は「(脚もとの不安により)コースで追えないが坂路ではよく動く。体つき、肩の筋肉は前走より張りが出た感じがある。あの馬らしい思い切ったレースをしてほしい」と話した。
「『日刊スポーツ 極ウマ』 [2020年12月02日 16時56分]の記事」より
競走馬のコンディション悪化により、いつもの調教メニューがこなせない場合はマイナスと判断しましょう。
※注意
コンディション悪化でなく、競走馬に足りない能力をアップさせるための調教メニュー変更は、むしろプラス評価です!
例として、宝塚記念時のキセキの追い切りについての記事のリンクを貼っておきます。
6.同じ週、同じコースを比較すること(※2023/1/15 加筆)
そして、各馬の調教を見る時は、出来れば「1週前追い切りは他の1週前追い切り」と、「坂路コースの追い切りは他の坂路コースの追い切り」と比べるようにしましょう。
何故なら、「異なる週やコースとの比較は馬への負荷が全く違ってくるため、馬の調子や動きの変化が分かりにくいから」です。
通常、帰厩したての時期の調教ではいきなりハードな調整を課さずに軽めの調整で身体を作り始め、レースが近づくにつれて徐々に負荷を強めます。
そして、レース1週間前の調教でハードなメニューをこなし、最終追い切りは輸送を控えてるため1週前追い切りよりも緩い調整で本番のレースに臨みます。
以上の調整過程から、帰厩したての時期の緩い追い切りと、本番のレースが差し迫っている1週前追い切りとでは、いくら同じコースでも馬への負荷が全然違うため、比較対象としては適さないのです。
ただし、調教の週が同じでも、使用したコースが違った場合も適切な比較対象ではありません。
何故なら、坂路とCWコース、ポリトラックコースといった各コースにはそれぞれ異なった特徴があり、馬へかかる負荷もまた違ってくるからです。
そのため、同じ1週前追い切りでも使用したコースが異なる場合は、「調教を見る時に注意しておくべき点」の「5.好走時の調教メニューかどうかを比較する」で述べた通り、「どうして追い切りのメニューを変えたのか」という視点でその馬の調子を推測するようにしましょう。
最後にこの項目で言ったことをざっくりまとめます。
調教を見る時は、馬の調子や動きの変化を分かりやすくするために、「同じコース・同じ週同士の追い切りを見比べる」ようにしましょう。
調教映像で見るべきポイント
それでは、いよいよ調教映像で見るべきポイントを解説していきます。
この項では、共通(馬なり、追い)、馬なり、追い、騎手の4点から注目すべきポイントを解説していきます
共通(馬なり、追い)
- まっすぐ走っているか(超重要!!)
まっすぐ走っていれば、馬が集中して走っている。
つまり、走ることに前向きな気持ちを抱いていると判断出来ます。
反対に、左右に大きくよろけながら走っていると、実戦で距離ロスや他馬の進路妨害に繋がりかねないので減点します。
- 頭が低いか
頭を低く振れていれば、推進力が正しく伝わり、より速く走れます。
それでいて大きく振れていれば良い調教と判断してよいでしょう。
逆に頭が高いと推進力が上手く伝わらないので減点します。
ただし、いつも頭が高いフォームで走る馬もいますので、普段の頭の高さを判断するにはその馬の過去の調教映像と比較してチェックしましょう。
- 全身が使えているか
首や脚の振り幅が大きい場合、全身が使えていると判断します。
ただし、歩幅の大きさには個体差があるため、これも過去の調教映像と比べてから判断しましょう。
- 蹴り上げた土の跳ね上がり具合
後脚で蹴り上げた土が高く跳ね上がれば跳ね上がる程、地面を力強く蹴れているため、より瞬発力のある走りが期待出来ます。
土の跳ね具合は坂路調教で顕著に確認出来る(晴れなら尚更)ので、是非とも注目してみましょう。
- 余力がどれくらいあるか(超重要!!)
道中でいくら良い加速をしても、終いの脚色がヘロヘロならば減点します。
よくあるパターンが、坂路タイムが「51.6-37.7-24.1-13.2」という風に、最後の1ハロンだけ極端にタイムがかかってしまっていることです。
このパターンの調教映像の殆どが、出だしは軽快に飛ばしているが、坂路コースの終点に近づくにつれてスピードが落ちていくという尻すぼみな内容で終わってしまいます。
実際のレースでも同じように終いの脚色が鈍ってしまえば、他の馬達にかわされてしまって敗北してしまう可能性が高いため、終いの脚色が悪い調教はマイナスと捉えて良いでしょう。
対して、最後までバテずに駆け抜ければ好調教と判断出来ます。
さらに、競走馬が耳を絞らずに駆け抜けた場合は余力十分な調教をこなせたと読み取れ、目を輝かせて駆け抜けた場合は馬が走ることに対してやる気満々になっていると読み取ることが出来ます。
このように、調教後の馬の余力はその馬の調子を測るためのとても大きな手がかりとなります。
したがって、競走馬が調教コースの終点でどれくらいの余力を残せていたかは、必ずチェックするようにしましょう。
馬なり(騎手が追わず、馬の気ままに走らせる調教のこと)
- 自ら加速する(超重要!!)
騎手が指示せずに加速すれば、少なくとも馬が勝負所で加速することを覚えていると判断出来ます。
それでいて、みるみる加速を続けて余力を残すようなら、加点してよいです。
- 併せ馬の相手を意識した挙動を見せる
併せ馬の具体的なアクションとして挙げる以下の3点は、闘争心の表れなので加点材料です。
①馬体を合わせた時に相手の方へ顔を向け続ける
②前を走る併せ馬の相手(または併せ馬の相手ではない他の馬)を見つけると自ら加速する
③併せ馬の相手に詰め寄られると、抜かせまいと加速する
追い(騎手が手綱をしごいたり鞭を打って、加速を促す調教のこと)
- 追いに対する反応を見る(超重要!!)
騎手の追いにすぐに反応をすれば、実戦でのゴーサインに素早く反応出来ると見て加点します。
加えて、追われている時にどのくらいのスピードで加速したかや、どのくらいのトップスピードを維持しているかも併せてチェックしましょう。
さらに、騎手が鞭を抜く動作や、見せ鞭(実際に鞭を打たず、打つモーションだけ行うこと)、鞭打ちに対して機敏に加速するなら尚更良いと判断します。
- コース終点後に追われる
栗東のCWコースや美浦の南Wコースでたまに見ることが出来る調整です。
もしもあなたがコース終点後に追われる馬の映像を見る場合も、基本的には鞍上の仕掛けに対して馬がどんなアクションを起こしたかで、その馬の調子を判断すると良いでしょう。
例えば、終点を過ぎても騎手に追われて続けているのに反応が鈍い場合は「まだ馬の身体が重い」、終点後に騎手に追われるとさらに加速して余力十分にコーナーへ差し掛かった場合は「終点までに馬が余力をたっぷり残していたので、さらに負荷を与えた」という具合にです。
なので、コース終点後に追われる馬を見つけてもすぐに良し悪しを決めず、馬の動きで判断するようにしてください。
鞍上
実は、馬だけでなく、鞍上の挙動も調教の判断に使えます。
ここでは、過去に見つけた鞍上の仕草をピックアップします。
- (併せ馬の時に)後方にいる相手の馬を見やる
相手の馬の手応えが悪い時に見られる仕草です。
併せた相手に対していつもこの動作をしていなければ、以下の2点の解釈が出来ます。
①併せた相手の状態が良くない
②自身の馬の状態が良い
- 自分が乗っている馬の足元を何度も見やる
いつも見ないのに馬の脚部を見やるということは、鞍上が何か違和感を察知した――つまり、いつもの走りではなかった可能性があります。
具体的には、ダコールという競走馬の2016年小倉記念の時の最終追い切りでこの挙動が認められました。
ダコールの2016年小倉記念の追い切りでは、休養明けから7戦目と使い詰めで脚部に疲労が溜まっていたのか、追い切りに騎乗した鞍上がダコールの足元を3度見やりました。
そして、レースでは1番人気に支持されましたが、結果は4着で馬券外に飛んでしまいました。
このように、鞍上が普段見ない足元を何度も見やる動作は「脚部不安」という競走馬の状態が下がっている時に見られる仕草だったので、減点材料と判断してもいいでしょう。
調教チェックは、大変そうに見えて意外とラクチン!
もちろん、対象馬の全レースの調教に対して上記のチェックをするのは時間がとてもかかってしまいます。
しかし、見るべき調教は以下の4つだけで問題ありません。
- 1週前追い切り(今走の状態を見るため)
- 1週前追い切りは、レース当週に輸送を控えた競走馬にとって、「最終リハーサル」となるケースがよくあります。さらに、多くの調教師が最終追い切りよりも1週前追い切りで競走馬に負荷を与える調整を施します。そのため、各馬のコンディションを図るのに最も重要な追い切りとなるため、可能な限り1週前追い切りの映像だけは絶対に見るようにしましょう。
- 最終追い切り(今走の状態を見るため)
- 最終追い切りは、基本的に1週前追い切りを終えた競走馬のコンディションを調整するための最後の追い切りです。そのため、1週前追い切りよりも軽い調整であることがザラなため、調教における競走馬のリアクションを見る映像としては、やや分かりにくい情報となります。また、最終追い切りでは1週前追い切りよりもタイムを出してこないため、字面でも好調教かが判断し辛く、「最終追い切りの時計が平凡だから、この馬の調教は悪い」といった誤った見解もしばしば見受けられます。そのため、最終追い切りは「輸送が控えた馬の調子を、レース時にピークに仕上げるための微調整」と認識し、競走馬のリアクションよりも「1週前追い切りと最終追い切りのメニューが、その競走馬の好調時のメニューと同じかどうか」で判断するようにしましょう。
- 前走追い切り(前走から今走までの調子の変化を見るため)
- 好走時追い切り(今走と好走時の調子を見るため)
※アプリ『JRA-VAN』の再生時間に換算すると、1頭あたり約30~40秒×4=最大約160秒(約2分40秒)で済みます!
さらに、調教チェックのコツも予想しながら場数をこなすことで自然と身につきます。
まずは、調教映像を実際にチェックすることからチャレンジしてみましょう!
調教予想がもっと上手くなる本を紹介(※2023/5/23 加筆)
例えば、調教予想をやっている時に、その馬の追い切り本数などで馬の調子を読み解かねばならない等、難しい判断を迫られる場面も出てきます。
そんな時、あなたに追い切り本数に関する知識がなければ、その馬の好調不調を見逃してしまう可能性があります。
そこで、調教予想の入門書にピッタリな本を一冊紹介させていただきます!
本のタイトル:増補改訂版 競馬に強くなる調教欄の取扱説明書
この本には、例として挙げた追い切り本数の話や、追い切りで使用されるコースの特徴、併用調教(坂路調教とトラック調教の両方を行っている調教のこと)等の調教にまつわる知識がざっくりと掲載されています。
そのため、本の内容としては読みやすく仕上がっており、競馬初心者の方にもオススメの一冊となっております!
この本を読めばさらに調教の知識が付きます。
そして、いつかあなたが見つけた穴馬で勝負する時に、調教の知識が確固たる予想の軸となり、あなたに高配当をもたらしてくれるでしょう。
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追い切り映像を見なくてOKな、インスタント追い切り診断術!
レース映像で注目すべきポイントをまとめました!
予想の役に立つ本は下記のページで紹介してます!
まとめ
いかがでしたか?調教映像は各馬の取捨に重要な要素である調子が分かるため、見方が分かれば宝の山なんです。
最後に、今日お話ししたことの要点をまとめたので、調教チェックの際に是非参考にしてみてください。
- 調教を見る時に注意しておくべき点
- その馬の過去の調教と今の調教を比較し、どう変化したかを見つける
- タイムやコメントでなく、その馬の調教の動きを重視する(超重要!!)
- 調教映像で見るべきポイント
- 馬がまっすぐ走っているか
- 馬がゴールした時に、余力がどれくらいあるか
- 馬なりの時に、馬が自ら加速するか
- 馬が鞍上に追われた時に、どんな反応をしたか
記事の方は、使えそうなポイントを見つけたら随時更新していきます!
以上で解説を終わります。
この記事が、皆様の馬券的中の一助になりますように!
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